相続した家の売買契約を結んだ後、家族の考えが変わり、売るのをやめたいと思っている方へ。売主から手付解除できる場合はありますが、受け取った手付金を返すだけで契約が終わるわけではありません。契約の定め、解除期限、買主が履行に着手しているかを急いで確認する必要があります。

ここでは、個人が相続した不動産を売る場合を中心に説明します。既に契約済みなら、その取引の仲介担当者へ早めに事情を伝えてください。解除の可否や相手方との争いがある場合は、契約書と経緯をそろえて弁護士へ相談します。

手付解除は「同額の返金」と違います

民法557条は、買主が手付を交付したとき、買主は手付を放棄し、売主は手付の倍額を現実に提供することで解除できると定めています。ただし、相手方が契約の履行に着手した後は、この方法による解除はできません。

例えば、受け取った手付金が100万円なら、倍額は200万円です。受領済みの100万円に加え、さらに100万円を用意する計算です。これは制度説明用の仮の金額で、実際の請求額や必要費用を示すものではありません。

「後で倍額を払う」と伝えるだけで要件を満たすとは限りません。通知方法、提供の方法、相手が受け取らない場合の対応は、自己判断で送金せず専門家へ確認してください。仲介手数料や既に依頼した作業の費用がどうなるかも、別途契約を確認する必要があります。

期限と履行着手を、両方確認する

まず、売買契約書の手付、解除期日、違約、特約の欄を読みます。一般の個人間売買では、手付解除の期限を設けるなど、契約で定めている場合があります。「まだ決済前だから解除できる」「期限内だから必ず大丈夫」とは決められません。

履行着手に当たるかは、実際に行われた行為や契約内容から判断します。買主側の支払いや手続について、いつ何が行われたかを確認してください。住宅ローン審査中、書類準備中といった言葉だけで、着手の有無を一律に判定しないことが大切です。

なお、売主が宅建業者である場合は、宅建業法による買主保護の規定が関係します。個人の相続売却と同じ条件で考えないでください。

手付解除できない場合も、勝手に契約を止めない

手付解除の条件を満たさなければ、相手方との合意による解消を検討することがあります。ただし、相手が応じる保証はなく、金銭や書類などの条件を含めた合意が必要です。

契約違反を理由に損害賠償や違約金が問題になる場合もあります。「違約金を払えばいつでも自由に撤回できる」とは考えず、どの条項が適用されるか弁護士へ確認します。解除の扱いが定まる前に、引渡しを一方的に拒んだり、別の買主と契約したりしないでください。

買主の融資が通らない場合は、住宅ローン特約と手付金返還の確認という別の論点です。売主の気持ちが変わった理由を、そのままローン特約に当てはめることはできません。

相談前にそろえたい資料と経緯

  1. 売買契約書、重要事項説明書、特約・変更合意の書面
  2. 手付金の金額と受領日、その後の入出金記録
  3. 解除期限と決済日、既に行った手続や相手とのやり取り
  4. 売却をやめたい理由、誰の意向が変わったか、現在の名義・共有者

分からない項目は「未確認」として、分かる資料から相談してください。期限が近いときは、資料を全部そろえるまで連絡を待たないことが大切です。

共有不動産では、家族全員の気持ちと、売買契約の当事者・権限を区別して確認します。まだ契約していない方は、共有名義の相続不動産を売る選択肢も参考に、残すか売るかの話し合いを先に進めてください。

契約前に迷っているなら、決める時間を取る

私は、家族の考えがまとまっていない段階で、契約を急いでほしくありません。売る条件だけでなく、今は売らない場合の管理や負担も整理し、納得してから判断することを大切にしています。一方で、締結済みの契約には相手方の権利があるため、気持ちだけで取り消せるとは伝えられません。

ソルトリゾートの相続不動産の売却相談では、契約前の選択肢や売却条件の整理をお手伝いします。既に他社で契約している場合は、その仲介担当者への確認を先に進め、解除の法的判断・紛争交渉は弁護士に相談してください。

確認した資料

※2026年9月確認の一般的な説明です。個別の解除可否、金額、通知方法は契約内容と事実関係によって異なります。