相続した家を売りたいけれど、遺言書に「遺言執行者」の名前があり、家族と執行者のどちらが不動産会社へ依頼すればよいのか分からない。その場合は、遺言書の内容と執行者の権限を確認してから、媒介依頼や売買契約の当事者を決めます。
遺言執行者は遺言の内容を実現する人です。指定されていることだけで、相続したすべての不動産を自由に売却できるわけではありません。売却して代金を分ける遺言か、特定の人へ不動産を取得させる遺言かによっても、確認すべき点が変わります。
「遺言を実現すること」と「家族が売りたいこと」を分ける
民法1012条は、遺言の内容を実現するために必要な管理・執行行為を遺言執行者の権利義務としています。売却を進める際は、この目的と実際の遺言文言を照らし合わせる必要があります。
たとえば、不動産を売却して代金を分配する趣旨なら、売却の権限や代金の管理・分配方法を確認します。一方、不動産を特定の相続人に承継させる内容なら、その取得手続きと、取得後の売却を分けて考えます。登記手続きを行えることと、第三者へ売却する権限があることは同じではありません。
これは確認のための区分です。短い一文だけを抜き出して結論を出さず、遺言書全体を弁護士や登記を担当する司法書士に見てもらいます。遺言の解釈で意見が分かれる場合は、先に弁護士へ相談してください。
査定と、契約を結ぶ権限も別に確認する
売却価格の見通しを知るための相談と、売却を依頼する契約・売買契約の締結は、同じ段階ではありません。
- 価格や準備の相談:相談者と不動産との関係、手元の資料、現地確認の可否を伝える。
- 媒介依頼:誰が依頼者となり、どの権限で依頼するのかを確認する。
- 売買契約・登記・決済:契約の表示、署名する人、必要書類、代金の受領・管理方法を確認する。
相続人が複数いても、全員の同意があれば必ず進められる、あるいは執行者がいれば相続人への確認は不要、と一律にはいえません。民法1013条は、執行者がいる場合に相続人が遺言の執行を妨げる処分等をすることを制限しています。
権限や必要な手続きが不明な間は、引渡し期限まで先に約束しないでください。名義が故人のままの場合は、相続登記と売却を進める順番も併せて確認できます。
相談前に集めたい書類と情報
最初からすべてそろっていなくても、何があり、何が見つからないかを整理すると確認しやすくなります。
- 遺言書全体と、検認・遺言書保管制度に関する手元の書類。
- 遺言執行者の指定または家庭裁判所による選任が分かる資料。
- 執行者が就任を承諾しているか、連絡を取れるかという情報。
- 土地・建物の登記事項、物件所在地、現に利用している人の状況。
- 相続開始日、売却を希望する理由、希望時期、家族間で未確認の事項。
必要書類は、遺言の形式や内容、登記の状況によって異なります。原本の提出先・部数・本人確認の方法は、担当する専門家へ確認します。
遺言執行者が指定されていない、またはいなくなった場合には、利害関係人が家庭裁判所へ選任を申し立てられる制度があります。ただし、すべての相続不動産売却で選任が必須という意味ではありません。遺言を実現するために選任が必要かどうかから確認します。
権限の確認中にも整理できることがある
誰が契約するかが決まっていない段階でも、固定資産税等の負担、建物の管理状況、手元の資料、売却希望時期は整理できます。現地の立入りや処分を伴う作業は、権限を確認してから進めます。
私は、書類が複雑なときほど、売却を急がせず「法律上の確認」「登記の準備」「不動産の価格・条件」を分けて説明したいと考えています。遺言の内容に沿った手続きを尊重し、そのうえで家族が判断できる材料を整えます。
ソルトリゾートは、現況や市場を踏まえた査定、販売条件、準備順の整理を支援します。遺言の解釈や執行者の権限を弊社だけで確定することはせず、専門家の確認結果と売却準備をつなぎます。全体の工程は相続不動産売却の流れ、支援範囲は相続不動産売却の相談案内にまとめています。
相談では「遺言執行者の指定があるか」「連絡が取れるか」「名義や売却権限のどこが未確認か」を、分かる範囲でお伝えください。確認が終わるまで契約を待つことも、大切な選択です。
確認に使った一次情報
- e-Gov法令検索「民法」:1007条、1012〜1015条の遺言執行者の任務・権限・行為の効果。
- 裁判所「遺言執行者の選任」:選任を申し立てられる場合と手続き。
2026年9月20日確認。遺言の効力・解釈、売却権限、必要な登記は個別確認が必要です。
