個人事業主の方から、「会社員より住宅ローンは難しいですか」「売上はあるのに、いくら借りられるのかわかりません」と相談を受けることがあります。
結論からいえば、個人事業主という働き方だけで住宅ローンの可否が決まるわけではありません。ただし、毎月の給与を受け取る会社員とは収入の確認方法が異なります。確定申告書や納税証明書をそろえ、売上、所得、ほかの借入れ、購入後に残す資金を分けて整理することが大切です。
私は、先に「通りやすい銀行」を探すより、申込先がどの期間の所得と書類を確認するのかを確かめてから物件予算を決めるほうが、話を進めやすいと考えています。
個人事業主も住宅ローン審査は総合判断
国土交通省の令和7年度「民間住宅ローンの実態に関する調査」では、回答した金融機関の94.2%が年収、93.9%が勤続年数、90.9%が返済負担率を審査項目に挙げています。カードローンなど、ほかの債務の状況や返済履歴を確認する金融機関も72.5%ありました。
同じ調査では、雇用形態を審査項目に挙げた金融機関は70.6%です。ただし、これは個人事業主なら一律に承認されないという意味ではありません。実際の申込条件と審査基準は、金融機関、保証会社、商品によって異なります。
個人事業主の場合は、事業を続けてきた期間や確定申告の内容も確認材料になります。売上高だけでなく、必要経費を差し引いた後の所得や納税状況を、申込先が指定する書類で確認します。
売上が大きくても借入可能額は決まらない
売上と所得は同じではありません。たとえば年間売上が同じでも、仕入れ、外注費、家賃、車両費などの経費が違えば、確定申告上の所得は変わります。
住宅ローンでどの金額を収入として扱うか、何期分を確認するかは商品によって異なります。「売上がこれだけあるから大丈夫」「直近だけ所得が増えたから希望額を借りられる」とは判断できません。
沖縄銀行が案内する住宅ローンの本審査書類では、個人事業主について、営業年数確認資料、確定申告書の直近2期分、納税証明書その1・その2の直近2年分などが挙げられています。これは沖縄銀行の案内であり、すべての金融機関に共通する必要書類ではありません。追加資料が必要になる場合もあるため、申込先へ事前に確認してください。
申込み前に整理したい5つの順番
1. 確定申告書と納税証明書をそろえる
まず、申込先が求める年数分の確定申告書と納税証明書を確認します。受付印、電子申告の受信通知、青色申告決算書や収支内訳書など、提出方法や事業形態によって追加確認が必要な場合があります。
申告後に修正した年がある、開業から日が浅い、申告していない期間があるといった場合は、物件の売買契約を急ぐ前に申込先へ伝えます。
2. 売上・所得・税金を年ごとに並べる
直近の数字だけを見るのではなく、申込先が確認する期間について、売上、所得、納税額を年ごとに並べます。増減が大きい場合は、季節性、設備投資、取引先の変更など、事業の実態として説明できる内容を整理します。
節税のために経費を計上することと、住宅ローンで確認される所得は別々の話ではありません。申告内容を変えるために不自然な処理をするのではなく、現在の申告内容を前提に申込可能な商品と予算を確認します。税務判断が必要な場合は税理士へ相談してください。
3. ほかの借入れと返済額を一覧にする
自動車ローン、事業用ローン、カードローン、分割払い、リボ払いについて、残高、毎月返済額、完済予定日を一覧にします。事業と生活の両方で使っている借入れは、申込先へ取扱いを確認します。
借入れを完済すれば必ず審査結果が変わるとは限りません。完済する場合も、事業資金や生活予備費を使い切らないかを一緒に確認します。
4. 住宅購入後に残す資金を決める
個人事業主は、生活費だけでなく、仕入れや税金、社会保険料など事業を続けるための資金も必要です。頭金を多く入れることだけを優先し、運転資金まで住宅購入へ回すと、購入後の事業と家計が不安定になるおそれがあります。
売買価格、諸費用、頭金に加え、生活予備費、納税資金、事業の運転資金を分けて考えます。
5. 商品条件を確認してから申込時期を決める
必要な事業年数、確認する所得、必要書類、金利タイプ、団体信用生命保険、保証、返済期間は商品によって異なります。フラット35のように公開された利用条件がある商品も含め、同じ借入額と返済期間で比較します。
事前審査を通過しても、本審査の承認や同じ条件での融資実行が保証されるわけではありません。物件、申告内容、借入状況を正確に伝え、売買契約の期限と住宅ローン特約も確認してください。
申告所得が少ないときは、予算・現金・時期を分けて考えます
売上があっても、確定申告書の所得が少ないと希望額を借りられないことがあります。ただし、所得だけで審査結果は決まりません。まずは申込先がどの年度のどの金額を確認するかを聞きます。
| 見直す項目 | 判断するために確認すること |
|---|---|
| 物件価格と希望借入額 | 毎月返せる金額から価格帯を下げられるか |
| 自己資金 | 諸費用を払った後も生活費・納税・事業の支払いを残せるか |
| 申込時期 | 今の資料で相談できるか、次の申告後に再確認する必要があるか |
住宅ローンのために売上を多く記載したり、必要経費を事実と違う形にしたりしてはいけません。税務上の判断は税理士等へ確認し、金融機関には実際の申告内容と現在の状況を説明します。翌年の所得が増えれば必ず通る、という保証もありません。
物件を選ぶ際には、店舗・仕事場への移動や取引先への訪問に必要な車の台数も、生活費と一緒に考えてください。購入時に使える金額と事業を続けるためのお金を分けることが、予算を決める出発点です。
法人の代表者は必要資料が異なります。役員報酬と会社の決算書を使った住宅購入の準備で確認できます。
沖縄で住宅購入を考える個人事業主の方へ
個人事業主の住宅ローンでは、売上の大きさだけを伝えるより、確定申告上の所得、納税状況、ほかの借入れ、事業と生活に残す資金を整理することが重要です。
ソルトリゾートでは、沖縄で住宅を探している方の申告書類、借入れ、自己資金、希望物件を整理し、金融機関へ確認する項目をまとめています。審査承認を保証することはできませんが、まだ物件を決めていない段階でもLINEでご相談いただけます。必要に応じて提携FPへの相談もご案内します。
確認した一次情報
- 国土交通省「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」
- 沖縄銀行「住宅ローンの必要書類」
- 沖縄銀行「おきぎんフラット35・おきぎんフラット50」
- 住宅金融支援機構「フラット35 ご利用条件」
※本記事は一般的な情報です。審査基準、所得の確認方法、必要書類、金利、保証、団信は、金融機関、保証会社、商品、申込時期、申込内容によって異なります。最新条件は申込先へご確認ください。
