相続放棄が家庭裁判所で受理されても、故人の家や土地について、放棄した人全員がいつまでも管理責任を負うわけではありません。一方で、放棄時にその不動産を現に占有していた人には、相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで、財産を保存する義務が残る可能性があります。
大切なのは、「相続放棄した」「鍵を持っている」「故人宅に住んでいる」「次順位の相続人がいる」「全員が放棄した」を分けることです。放棄した人は所有者として自由に売却できません。危険箇所の応急対応や家財処分も、権限と必要性を確認して進めます。
この記事では、相続放棄後の不動産を売却相談へ持ち込む前に、誰が何を確認するかを整理します。
2023年施行の改正で「現に占有」が基準になりました
法務省の改正説明では、民法940条の保存義務を負うのは、相続放棄の時に相続財産を現に占有している人に限られます。その義務は、自己の財産と同じ注意をもって財産を保存し、相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで続くものです。
つまり、「親族だから」「相続順位が先だったから」という理由だけで、放棄後も当然に保存義務が続くとはいえません。反対に、故人と同居していた、故人宅を事実上管理していたなど、現に占有していると評価され得る場合は、受理通知だけを見て管理を止めない方が安全です。
ここでいう保存は、財産の現状を維持するための行為です。売却、賃貸、大規模な解体、家財の一括処分など、処分や契約に当たる行為を自由に行えるという意味ではありません。
放棄後は5段階で確認します
1. 放棄の受理と対象者を確認する
家庭裁判所の相続放棄申述受理通知書などで、誰の放棄がいつ受理されたかを確認します。自分の放棄が受理されても、他の親族の相続関係まで自動的に確定するわけではありません。
配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹など、次順位の相続人へ相続が移る可能性があります。戸籍と放棄状況は司法書士・弁護士へ確認し、親族へは不動産の所在地、鍵、税通知、危険箇所など必要な情報を正確に共有します。
2. 放棄時に誰が現に占有していたかを整理する
故人宅に住んでいた人、鍵を持ち定期的に出入りしていた人、賃料や光熱費を管理していた人など、実際の関わりを時系列で整理します。占有の法的評価は個別事情で変わるため、自己判断で「自分には何も義務がない」と決めないでください。
空き家から離れて暮らし、鍵を預かっただけの人と、故人と同居し建物を使っていた人では事情が異なります。写真、郵便物、契約、支払記録、鍵の保管状況を残します。
3. 保存が必要な危険と費用を分ける
台風で屋根材が飛びそう、漏水が続いている、窓が割れて侵入できるなど、第三者や建物への被害が広がるおそれを確認します。緊急性がある場合は、現況写真と見積を残し、自治体、保険会社、専門家へ相談して必要最小限の対応を検討します。
固定資産税、火災保険、電気・水道、庭木、集合住宅の管理費なども一覧にします。ただし、誰が負担すべきか、支払いが相続にどのような影響を与えるかは個別判断です。高額な工事や家財処分を先に契約しないでください。
4. 次順位相続人へ引き継げるか確認する
次順位の相続人が相続を承認する場合は、鍵、書類、現況、費用、対応履歴を一覧にして引渡しを相談します。受取りの事実と日付を記録すると、後の認識違いを減らせます。
次順位の人も相続放棄を検討している場合、処分を急がせず、各人が家庭裁判所や専門家へ確認できる時間を確保します。相続不動産売却の全体の流れは、相続する人が確定した後の名義・査定・売却の確認に使えます。
5. 相続人がいないときは清算人を検討する
相続人の存在が明らかでない場合や、相続人全員が放棄して相続する人がいなくなった場合、家庭裁判所は利害関係人などの申立てにより相続財産清算人を選任します。清算人は債務を支払い、不動産を含む財産を清算し、残余財産を国庫へ帰属させる手続を行います。
申立てには戸籍や財産資料が必要で、収入印紙・郵便料・官報公告料に加え、事案によって予納金が必要になることがあります。誰が利害関係人として申し立てるか、費用をどう準備するかを弁護士・司法書士と確認します。
不動産会社へ相談できる範囲
相続放棄した人から、不動産の所在地、現況、周辺相場、売却した場合の一般的な見通しを聞き取ることはできます。ただし、媒介契約や売買契約を結べるのは、原則として権限を持つ相続人や相続財産清算人です。
査定を取る場合も、「売却を依頼するため」なのか、「清算人選任や費用検討の資料にするため」なのかを明確にします。不動産会社の査定だけで、相続人、占有、保存義務、処分権限は確定しません。
引き渡す、保存する、清算人を申し立てる、待つ
次順位相続人が確定し、引渡しの準備ができれば、資料と鍵を整理して引き継ぎます。現に占有していて引渡し先がまだ決まらない場合は、必要最小限の保存を続けながら専門家へ確認します。
全員が放棄して相続人がいない場合は、利害関係と費用を確認して相続財産清算人の申立てを検討します。危険がなく、関係者の確認に時間が必要なら、処分をせず記録を残して待つことも選択肢です。ただし、相続放棄の申述期間や危険建物への対応は待てないことがあるため、早めに家庭裁判所・専門家へ確認してください。
私は、相続放棄後の不動産をすぐ売却案件として扱わず、誰に権限があり、誰へ引き渡せるかを先に整理することを大切にしています。法的な確認が終わるまでは、財産価値と安全を損なわない範囲で対応します。
ソルトリゾートが整理できること
ソルトリゾートは、沖縄の相続不動産について、物件の現況、危険箇所、周辺相場、売却時に想定される調査・費用を整理します。相続人・占有・保存義務・清算人選任は弁護士や司法書士、税務は税理士などへ分けて確認します。
沖縄・大阪の相続不動産売却相談では、すぐ売れる前提で進めず、誰に処分権限があるか、査定を何の資料に使うかから確認できます。相続放棄受理通知、登記事項証明書、固定資産税通知、現況写真があると整理しやすくなります。
確認した一次情報
※本記事は2026年9月時点の一般的な情報で、個別の相続・占有・保存義務・清算手続の法的判断ではありません。相続放棄の有効性、次順位相続人、現に占有しているか、行える保存行為、費用負担、清算人申立ては、家庭裁判所・弁護士・司法書士等へご確認ください。
