相続した空き家を売るか貸すかは、査定価格と月の家賃だけでは決められません。貸し出す前の改修費、入居していない期間の支出、管理を担う人、将来家族が使う予定まで比べてから判断します。

特に、家賃が入りそうだからと修繕を発注する前に、現状で売った場合の手残りと、貸すために最初に払うお金を確認してください。まだ賃貸に出していない家なら、契約前に選べる方法があります。すでに入居者がいる場合は、賃貸中の不動産を相続したときの確認順を先にご覧ください。

貸し始める前に、同じ条件で見積もりを取る

比較の出発点は、家の状態と家族の意向です。相続人の間で誰が判断するのか、売却代金や家賃をどう扱うのかが決まっていなければ、工事や賃貸契約を先行しないでください。名義や共有者間の権限が不明な場合は、司法書士や弁護士などへ確認します。

比べる項目 売る場合 貸す場合
最初の支出 売却に必要な費用。現状で売れる条件も確認 貸せる状態にする改修、設備、募集などの見積もり
入ってくるお金 成約価格から費用・税等を差し引いて考える 実際に入居・入金があった家賃から支出を引く
持ち続ける負担 売却・引渡しまでの管理と維持費 空室時も含む税、保険、修繕、管理費用
将来の使い方 売却後は家族が自由に使えない 家族の都合だけで入居者に退去を求められるとは限らない

売却査定と賃料査定は、同じ建物の状態を伝えて依頼します。売却だけ現状の価格、賃貸だけ大規模改修後の家賃を比べると、費用を見落としやすくなります。改修前と改修後、それぞれの金額と前提を分けてもらってください。

家賃をそのまま手残りにしない

賃貸の比較には、満室ならいくら入るかだけでなく、入居まで時間がかかった場合と、退去後に次の入居者が決まるまでの期間も織り込みます。

年間の手元資金を考えるときは、実際の家賃収入から、管理・募集・修繕・税・保険などの支出を引きます。借入れがあれば返済も別に反映します。これは資金繰りの確認であり、税務上の所得計算とは同じではありません。敷金など後に返還が必要になるお金も、自由に使える収入と分けます。

さらに、最初の改修費は、毎年の支出とは別枠にしてください。年間の手残りが出る見込みでも、改修に使った資金を回収するまでに時間がかかります。途中の設備故障や空室もあるため、単純に改修費を一年の手残りで割った年数だけで採算を決めないようにします。

見積もりを取る際は、次の点を確認します。

  • 提示家賃は募集額か、周辺の成約例から見た見込みか。
  • 入居者募集が長引いた場合、どの支出が続くか。
  • 屋根・外壁・給湯器など、近く修繕や交換が必要な部分はあるか。
  • 管理料に含まれる対応と、別料金の対応は何か。
  • 入退去時の費用と、貸主が残しておく修繕資金はいくらか。

遠方に住む場合は、誰が対応するかも費用と一緒に決める

管理会社へ依頼するとしても、所有者が判断することまでなくなるわけではありません。設備が故障したときの連絡先、修繕を依頼できる金額の範囲、見積もりの確認方法、台風後の点検などを契約前に確かめます。

親族に頼む場合も、定期確認、緊急時の対応、実費、交通費などを曖昧にしないことが大切です。家賃が入る見込みがあっても、管理を続けられる人が決まらなければ、先に管理方法を決めるか、売却も比較に残します。

修繕費をすべて入居者に負担してもらう前提は避けてください。国土交通省の原状回復ガイドラインは、通常損耗や経年変化と、借主の故意・過失などによる損耗を分けています。貸主・借主の負担は契約と損耗の原因などを確認し、退去時の精算まで含めて考えます。

家族が使う予定と賃貸借の終わり方を先に確認する

数年後に子どもが住むかもしれない、将来は自分が沖縄へ戻るかもしれないという場合は、その予定を賃貸を扱う業者へ伝えます。

普通建物賃貸借は、契約期間が来れば貸主の都合だけで当然に終了する契約ではありません。貸主からの更新拒絶などには正当事由の問題があります。一方、定期建物賃貸借は、適法な契約・説明等の要件を満たせば更新なく期間満了で終了する仕組みですが、終了通知などの手続も必要になる場合があります。期間だけ書けば成立するものとして扱わないでください。

将来の利用予定があるから必ず定期借家がよい、貸せば家が必ず戻る、とはいえません。契約の条件、入居希望者との適合、家族の予定の確かさを比べ、必要な法律判断は専門家へ確認します。

貸す前に、将来売るときの税条件も確認する

相続した空き家の売却には、条件を満たすと譲渡所得の特別控除を利用できる制度があります。ただし、国税庁が案内するこの特例には、相続から譲渡まで事業・貸付け・居住に使われていないことなどの条件があります。

いったん貸した後に空き家へ戻せば同じ特例を使える、と考えて賃貸を始めないでください。制度には建築時期、相続時の状況、売却期限などほかの条件もあります。税の有利不利だけで売却を決める必要はありませんが、相続空き家の特例と確認条件を参考に、貸す前に税理士や税務署へ自分の物件の扱いを確認しておくと比較がしやすくなります。

見積もりがそろうまで、発注を待つ選択もあります

貸すための改修費が大きい、家族の予定が決まらない、管理先が見つからない場合は、工事や募集をいったん待ち、現状の売却価格と比較できます。保留中も空き家の点検や必要な維持管理は続けます。

当社は相続不動産の現況確認、売却査定、売り方と費用の確認をお手伝いします。賃料・募集条件・管理受託の具体的な見積もりは、賃貸を扱う業者へ確認してください。当社が家賃や入居を保証するという案内ではありません。

相続不動産の売却相談では、所在地、名義、建物の状態、家族が使う予定など、分かる範囲から伺います。売るか貸すか決まっていない段階でも、売却側の比較材料を用意できます。家財処分を先に進めるか迷うときは、片付け前に査定する確認順もご覧ください。

確認した一次情報

2026年9月29日確認。賃貸の収支、契約条件、修繕や税務は物件と契約によって異なります。標準契約書は参考となるモデルであり、すべての契約で同じ条項が適用されるものではありません。